幸運確率
「大丈夫ですか?」
そう言って眉を下げ、上目遣いに自分を見てくるアスカに、幸人は軽く息をついた。
原因は自分の怪我。今日の戦闘によるものでアスカには全く非がないと言うのに
この心配振り。
そんなに俺が頼りなく思えるのか、それともそんなにも俺が好きなのか。
・・・・・・後者だな、絶対。
そんな事を考えているあたり本当に怪我は軽い捻挫程度であろう。凌駕達は心配げに幸人の治療
を見詰めているアスカを慰めるべく、にこりと微笑む。
「ま〜そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「そうそう、なんて言ったって幸人さんはプロだもん。
こんな捻挫、ちょちょ〜いって治しちゃいますよ」
はい、お仕舞い。そう言ってらんるは幸人の右手に巻き終えた包帯を軽く叩いた。
「おい!」
乱暴な扱いに思わず抗議の声を上げかけるが、目の前で項垂れるアスカにそんな姿を見せたら
益々心配決まっている。幸人はもう一度軽く息をついて怒りを逃がし、
「・・・・・明日には治る。」
と言って、いつもなら見る事がないアスカの旋毛に向けて、ポンと手を下ろした。
「さ、とりあえずメシにするぞ。午後からは店を開けるからな」
そのままワシャワシャとアスカの髪を混ぜると、ようやくアスカの顔に笑みが戻った。
「はい、幸人さんの分まで頑張ります!」
「じゃあ早速お昼の支度を手伝ってくれますか?」
「はい♪」
幸人さんは座っててくださいね。真剣な顔でそう告げ、アスカは凌駕と共にキッチンへと
向っていった。
・・・しかし、ついてない。
こんな怪我はするし、アスカには心配をかけるし・・・
そういえばいつもの占い師が言ってたな、今日の俺の運勢は
『大吉(苦笑)』だと。だったらもう少しついてても・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・って待て。(苦笑)ってなんだ!?
単なる大吉じゃなかったかのか!?・・くっ!あの占い師め!!
思いつめた表情で告げてくるから、うっかり聞き逃す所だったぞ!!
大体、いつもいつも人を勝手に呼び止めては勝手に宣言して・・・
商売する気はあるんだろうか?
ま、今日は客が居たみたいだがな・・・だがあれは客だったのだろうか?
無駄に目つきの悪くて、肩がぶつかっただけで人を殴り飛ばしそうな黒いヤツが居たが、
思いっきり占い師の胸倉掴んでたしな。
あの占い師曰く、そいつの今日の運勢は『△-4』だったらしい。
・・・・・・・胸倉の一つでも掴みたくなるか・・・
「やはり痛みますか?」
その声にハッと我に返ると、目の前には昼食(本日は時間がなかった為恐竜カレー)が
並べられており、再び心配そうな表情に戻ったアスカがこちらを伺っていた。
「いや、違う。・・・・さっさと食うぞ」
まさか今日の自分の運勢について考えていたなんて言える筈もなく、幸人は誤魔化すように
勢い良く目の前に置かれたスプーンに手を伸ばした。・・・・が、
「はい、ど〜ぞv」
と、横から差し出されたモノにピシッと体を固まらせた。
「どうかしましたか?」
動かなくなった幸人に、差し出したアスカは首を傾げる。
「・・・・アスカさん、それって・・・」
同じように固まっていた凌駕が、呆然としたまま問い掛ける。
そこにはカレーを掬ったスプーンを幸人に差し出すアスカの姿。
所謂『はい、あ〜んしてv』状態だったのである。
「あぁ、幸人さんの怪我は利き手ですからね。日頃お世話になっている代わりに
その怪我が治るまで、きちんとお手伝いさせてもらいます!」
だからど〜ぞv そう言ってにこりと微笑み、スプーンを差し出すアスカ。
・・・夢?夢なのかこれは。
それとも俺の怪我は本当は捻挫なんかじゃなく、頭をやっちまったのか!?
いや違うな、そうじゃない。これが俺達の本来あるべき姿だったんだ。
こういったものは俺のダンディズムに反するが、相手がアスカなら問題ない。
ダンディズムだろうが外聞だろうが綺麗さっぱり捨ててやる。
「・・・仕方ないな」
如何にも渋々・・と言った表情で差し出されたスプーンに顔を近づけようとした幸人だったが、
「じゃ、俺も手伝いますね♪」
と言って向かい側から差し出された凌駕のスプーンに阻止されてしまう。
「・・・・・何の真似だ、凌駕」
「いや〜俺も三条さんにはお世話になってますし、少しでも役に立てたらな〜ってv」
・・・凌駕、余計な世話を有難う。
この礼は手が治り次第、ゆっくり、じっくり、丹念に返してやるから
とりあえず今は消えうせろ。
「いや、アスカだけで充分だ。」
と、殺気を放ちながら断るが、そんなもの何処吹く風。凌駕は笑みを強くして
更にスプーンを差し出してくる。
「遠慮しないで下さいよ♪沢山食べて早く治して貰わなきゃいけないですからね」
「そんなにあちこちから出されたら、気が散るだろう」
「食事は和気藹々と食べるもんです。集中してばかりだと楽しめませんよ」
―――既に今現在、和気藹々という雰囲気から外れまくっているのは問題ではいらしい。
言い合う二人を前に、アスカは冷めてしまっても美味しいけど、なるべくなら温かいうちに
食べたいな〜・・とじっとカレーを見詰めていた。
「判りました、じゃあこうしましょう。・・・アスカさん」
「はい?」
突然凌駕に呼ばれ、慌てて視線を戻すとそこには凌駕の差し出すスプーンが。
「アスカさんが三条さんに食べさせて、俺がアスカさんに食べさせるって事で。
それだったら間接的に三条さんの役にも立てるし、アスカさんもきちんと食べれる。
一石三鳥ですね♪」
ゴスッ!!!
指を三本立て、笑顔でそう言う凌駕に幸人の容赦ない拳が落とされる。
「〜〜〜!痛いですよ三条さん〜」
「俺だって痛いわっ!!」
思わず出してしまった拳(捻挫中の右手)を摩り、幸人の怒りは益々ヒートアップしていく。
「大体なんでそうなる!第一それを言うなら一石二鳥だろうが!!」
「いや〜+1は俺の幸福感って事でv」
「お〜ま〜え〜は〜!」
「あ、ちょ、待って下さい三条さん!それ以上やったら怪我が酷くなりますよ?」
「構わん!!」
再び拳を振り上げる幸人に、それをかわそうとする凌駕。
「え〜と・・・私はどうすれば・・・」
「とりあえず食べときましょう?」
「らんるさん・・・」
その言葉にらんるの方を向けば、既に彼女の前にある皿は4分の1程を残すばかり。
「・・・・・・そうですね、いただきます」
ず〜っと持ちっぱなしだったスプーンと、何やら楽しげに言い合いをしている二人を
交互に見た後、アスカはきちんと手を合わせ、パクリとカレーを口に運んだ。
「・・・・最悪だな、今日は」
幸人は湯船にゆったりと体を浸けながらポツリと呟いた。
結局、昼食は食べる前に時間オーバー。勿論夕食もお約束のように
邪魔が入り、怪我をしていない方の手で食べる事になったのだ。
折角のチャンスが水の泡・・・・か。
やはりあれか?『大吉(苦笑)』がいけなかったのか!?
俺の運勢は一体どんな風になっているんだ?
はぁ・・・なんか凌駕達が居る限り、真の幸せは絶対やってこない気が激しくしてきた。
・・・・・て、いかんいかん。そんな弱気でどうする、俺。
何時だって俺は自分の手で運命を切り開いてきたじゃないか。
俺の幸せ、強いてはアスカとの幸せの為。ここは涙を呑んであいつらを
排除して撲滅して削除して消滅させておこう。
俺が幸せになるにはそれしかない。
よしっ!・・・と小さな波を作りながら気合を入れていると、不意に脱衣所に誰かが入ってきた
音がした。
誰だ?と思う間もなく、ちょっといいですか? とかけられる声。
「アスカか?どうした」
「はい。利き手が使えないと不便だと思って手伝いに来ました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?」
「失礼しま〜す」
突然の事に、思わず湯船の中で正座してしまうが、嫌がる理由など何一つなく、
カララッと軽快な音を立てて開く扉と共に、ようやく来た幸福の足音を聞いた幸人であった。
・・・・・・・・・・・・・・が、
・・・・・・・・・チッ、フル装着か。
・・・人生はそんなに甘くないらしい。
「もう体、洗っちゃいましたか?」
「ああ」
何処か楽しそうにそう聞くアスカに、幸人は湯に沈み込みたくなる気持ちを浮上させる。
「じゃあ髪の毛、洗わせてくださいね?」
そう言ってアスカは幸人と目線を合わすように膝をつき、にこりと笑った。
「なんか楽しそうだな、お前」
「はい、楽しいです!・・・と言うか寧ろ嬉しいですね。いつも幸人さんにはお世話に
なりっぱなしですから、こうしてお役に立てるかと思うと、とても嬉しいです。
あ、でも怪我をされているんでしたね、すみませんはしゃいでしまって・・・」
そう言って段々と俯いてしまうアスカに、幸人は苦笑する。
「気にするなと言っただろう。これは俺のミスだ。それに・・・」
くるりと体勢を変え、アスカに背中を見せる形で浴槽に体を預けると、
「お前の世話をやいているという自覚も俺にはない。やりたいからやっているだけだ」
俯いているアスカの顔を下から覗き込むように顎を反らせた。そして視線を合わせると
そっとアスカの前髪を一掬い分摘んで引っ張る。
「・・・で、お前はどうする?俺の髪を洗ってくれるのか?」
柔らかく口元をあげ、そう問い掛けると、アスカは再び嬉しそうな顔に戻り、
「はい!やらせて頂きます!」
と言ってニコリと微笑んだ。その答えと表情に、幸人は『大吉(苦笑)』を
満喫するのだが・・・・・
「・・・ってちょっと待て、アスカ。それは一体なんのつもりだ?」
「え?これですか?」
そう言ってアスカは手にしていたモノを掲げ、首を傾げる。
それはなんの変哲もない、見慣れたものなのだが、今は違う。思いっきり不自然だ。
「何って・・・髪の毛を洗うんですよね?」
「そうだ」
「だったら必要ですよね?・・・卵。
これを使うと、髪の毛がとても綺麗に潤うらしいじゃないですか」
にこやかにそう言うアスカに、幸人の『大吉(苦笑)』が崩れていく。
「・・・ちなみにそれは誰に聞いた?」
「凌駕さんとらんるさんです」
「そうか・・・アスカ、髪を洗うのは後だ。ちょっと予定が出来たんでな、
一汗流したらまた風呂に入るからその時に頼む」
「?判りました」
先程とは丸っきり違う笑みを浮かべ、そう言う幸人にアスカは首を傾げながらも
素直に頷いた。
―――その夜、いつも賑やかな恐竜やは、賑やかなまま、朝を迎えたのであった。
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斗崎サマ・37000番ゲットリク・久々に運がいいカリスマ&相変わらずほんわかなアスカ
・・・と言う事で、拙いものではありますが、捧げさせて頂きます。
如何でしょう、少しは運が良かったんでしょうか、ウチのカリスマ(汗)
微妙な所ですね、きっと(笑)
ほんの少しでも気に入って頂けたら、嬉しいです♪
では、リクエスト本当に有難うございましたv
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太門さまのサイトで恐れ多くもキリ番を踏みましたのでリクしたら、こんな素敵な小説を頂きました!やっほーい!
「久々に運がいいカリスマ&相変わらずほんわかなアスカ」というなんとも判りにくいリクにズバッと答えてくれるあたり流石としか言い様が無いです。
しかも某R騎な人達まで出てきてもう悶えるしかないっすよ!!
太門さま、有り難う御座いましたー!!!
GET&UP 2003/11/1
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