静かな店内に、時折響き渡る悲鳴。
それを耳にする度に、カウンターに座っているアスカはオロオロと視線
を彷徨わせ、その隣に座っている幸人は深々と眉間の皺を刻み込んだ。
「・・・なんでこんな目に・・・」
自然と零れてくる言葉と共に、幸人の手にしていたカップに皹が入った。
それに気付いたアスカが、幸人の手元に視線を向ける。
「だ、大丈夫ですか!?りょう・・・・幸人さん!」
思わずポロリと出てしまった名前に、慌てて言いなおすが、時既に遅し。
青褪めるアスカの前で、幸人の皺とカップの皹が一気に増加した。
「すみません、幸人さん・・・・」
それを見て、申し訳なさそうに俯くアスカに、幸人は深く息をつくと
「・・・次からは気をつけろ」
とだけ告げ、手にしていたカップから手を離した。
―――敵の技によって、凌駕と幸人の中身が入れ替えられてから早数時間。
三条幸人は何十回目になるか判らない溜息をテーブルの上に落とした。
―――感じる幸福・見える不幸
大体なんで俺と凌駕なんだ?
こいつの姿をしていると、魂の真髄から黒くなりそうだぞ!
・・・まぁアスカと凌駕じゃなかったのが幸いだったがな。
アスカの姿であの腹黒オーラを出された日には・・・・
何もかも投げ出して、思い出の中へと逃げ込みたくなっただろうからな。
その反対に、凌駕の姿で癒しオーラ全開・・・と言うのも・・・・
・・・・・・・・・・・・やめよう、脳が想像を拒否している。
ま、俺はアスカを外見のみで好きになった訳じゃないからな。
どんな姿であろうとも、アスカでさえあればそれでいいんだが・・・・
―――何事も、限界ってものがある。
そう思う俺は決して間違っていない・・・と幸人は小さく頷いた。
「あの・・・本当に大丈夫ですか?」
先程から溜息をついたり、カップを割ったり・・・と奇行を繰り返している
幸人に、アスカが心配そうに声をかけた。
それに「大丈夫だ」と答えると、アスカは心配げに下げられた眉を柔らかく上げ、
「そうですか」
と、安心したように微笑んだ。
・・・外見のみで好きになった訳じゃない。訳じゃないが・・・・・・・
『お前』が『お前』で本当に良かった!!
思わず小さくガッツポーズを取る幸人。
しかもこうして顔を合わせてみると、いつもより少しだけ
視線が近くなっているのが判り、ちょっとだけ幸せ気分が幸人の中に沸きあがる。
・・・が、それも直ぐに真っ黒に染まっていく。(←既に魂染まり気味)
凌駕になった幸人が今体験している視界は、いつも凌駕が見ている世界な訳で・・・
幸人は奥の基地で断続的に悲鳴を発生させているらんるに、心からエールを送った。
―――どうやら彼の中では『自分の体の安全』<『凌駕への制裁』という図式が成り立ったらしい。
「らんるさん達、まだ出てきませんね〜」
再び奥へと視線を向け、呟くアスカに幸人は曖昧に頷きながらも、そちらに向けて
『一生出てくるんじゃない!』・・・と念を送る。
とりあえず、今後胃痛と共にやってくるだろう色々な問題よりも、ささやかなこの瞬間の幸せ
を確実に味わっていたいらしい。
そんな事を真剣に祈っている幸人に、アスカがくるりと視線をまわしてくる。
「そうだ、幸人さん。見回りがてら外にでも出てみませんか?」
まだらんるさん達も時間がかかりそうですし、気分転換になりますよ?・・・と笑顔で言うアスカの声と共に、
軽やかな鐘の音が聞こえた気がした幸人であった。
外に?・・・今、確かに外に出て・・・と言ったな、アスカ。
しかも俺のみに向けて!
これはまさしく、絶対、間違いなく、デートの誘いだな!?
しかもらんる達の時間がかかりそうだからって事は、時間など気にせず、
いっその事夜までゆっくりしてこようって事か!!
思えば俺達、いつでもおまけが居て二人っきりにはなれなかったものな。
店に居ても、買出しに行っても、あげく戦闘に行っても
何時でも何処でも+αだ!!
しかし、今は違う。
らんるは嬉々として凌駕を痛めつけ・・・治そうとしているし、凌駕はその拷問・・・
治療(?)から逃げれそうもない。
・・・・こんなチャンス、滅多にないだろう。
今まで欠片ほども信じていなかったし、アスカとの事は俺が今まで、それこそ血反吐を吐きながら
築き上げてきた諸々の結果だとは思うが・・・少しだけ感謝するぞ。
そう思い、幸人はフッと口元を上げ、天井を仰ぐ。
有難う、神。
――凌駕と入れ替わった事で、溜まっていたストレスが一気に弾けたのか、
それとも元からこうなのか・・・現在三条幸人の精神は本当に微妙な所にあるらしい。
「じゃあ行くか・・・」
幸人はそう言いながらテーブルに手を付き、腰を上げようとした所でピシッと固まってしまう。
その視線の先には、見慣れない手とジャケットの色・・・
――くどい様だが、現在幸人と凌駕の体は入れ替わってるわけで・・・
って事はあれか?自分的には俺とアスカのデートなのに、傍から見れば凌駕とアスカのお出かけ
になってしまうのか?
街に出て、ウィンドウに写った姿なんかを目にいれたりした場合、其処には凌駕とアスカが
見える訳なのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・許せんな、それは。
幾ら中身が俺だろうと、アスカの隣にこいつが居ていい筈がない。
しかもそれを見せられるなんて・・・・見るたびにそれを写した媒体を壊すぞ、俺は。
・・・ま、そんなもの幾ら壊したとしても、軽く弁償はできるがな。
しかし精神的苦痛は免れないだろうし、凌駕のせいで金を使うなんてもっての他だ!
おのれ凌駕・・・何処まで他人に迷惑をかければ気が済むんだ!!
――明らかにそれら全ては凌駕のせいではないのだが、幸人にとっては違うらしい。
ギュッと拳を握って再びイスへと落ち着いた。
・・・考えて見れば、態々外に出なくてもいいさ。
こうして今二人きりの状況なんだしな。
まぁ奥のほうから聞こえるBGM(悲鳴)が五月蝿いが、いざとなったら部屋に
アスカと篭ればいい訳だしな。
鍵をかけて、バリケードを築いて、密かに廊下に設置した『対俺的ラスボス感知レーダー(瞬殺Ver)』を
作動させれば、何も問題はあるまい。
折角の誘いを断るのは心苦しいが、これも俺の精神とアスカの為だ。
元に戻るまで我慢して貰おう。
「あの・・・幸人さん?」
「いや、やはり止めておこう。変身出来ない今の状態で、敵が出てきたら面倒だ」
そう言って、心配そうにこちらを見ているアスカを安心させようと、その肩を
軽く叩こうとして・・・再び幸人は固まった。
そこには見慣れない手とジャケットの・・・・・・
その日、三条幸人は「神の存在」よりも「邪魔者の存在」を改めて実感させられたのであった。
〜その後〜
「いや〜元に戻れて本当良かったですね〜♪」
「全くだ」
「・・・にしても三条さん、異様に俺、腰とか肩とか首とかが痛いんですけど、
何かしました?」
「いや。ただ一人で部屋に居る時暇だったんでな、整体の勉強を
体を張ってやっていただけだ」
「って俺の体、勝手に使わないで下さいよ〜!!」
「仕方ないだろう。一々気にするな」
「気にしますって!あ〜もう、肩重いな〜ι」
「あ、凌駕さん肩が凝っているのですか?じゃあ私が肩叩きしてもいいですか?」
そう言ってニコニコと嬉しそうに寄って来るアスカ。
「最近幸人さんのお手伝いをしてて覚えたんです♪」
「いいんですか?じゃあお願いしちゃおうかな〜vv」
と、アスカに背中を向けようとした所で・・・
ガシッ!!!
と力強くその肩を?まれる。
「・・・あの、三条さん?」
「・・・いや、考えてみれば勝手にお前の体を使った俺が悪かったな」
肩を掴んだ手に力が込められ、凌駕は自分の中からミシミシと言う嫌な音が鳴り出したのを聞いた。
「い、いえ、いいですよ〜。三条さんがそれだけ仕事熱心って事なんですから、だから・・・」
「いや、よくないな。ここは、俺が、懇切丁寧、心を込めて・・・・治療にあたろう(微笑)」
「え、遠慮しときます〜(滝汗)」
「遠慮するな。まぁ色々やったからな・・・朝までは確実にかかるだろうが・・・大丈夫だ(微笑)」
「そ、その笑顔が既に大丈夫じゃないですって〜!!!」
悲鳴に似た叫びを残し、凌駕はズルズルと幸人に引き摺られていく。
その光景を見て、アスカは『仲間って・・・いいな』と、目尻に浮かんだ涙をそっと拭った。
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斗崎さま・49000番ゲットリク・アスカさんと2人でイチャラブできそうな状況なのに出来ない幸人・・・
という事で、拙いながらも捧げさせて頂きます〜♪
い、如何でしょうι27話ネタを引っ張ってきてしまいましたが(滝汗)
しかもカリスマ、壊れてる・・・ι(←何時もの事ですねι)
少しでも楽しんで頂けたら、幸せですv
それでは、リクエスト本当に有難うございました♪
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というわけで。
太門さまのサイトで49000Hit(すげぇ!)をおこがましくも踏んづけましたのでリクしちゃったらステッキーな小説を頂きました!
此処で赤&青(あくまでも「赤青」と表記したくない乙女心/笑)の入れ替わりネタでくるとは!予想もつきませんでしたよ!
すごいです太門さん!がつんとリクに答えてくれています!
相変わらず微妙に不幸なユッキーがたまりません(笑)
太門さん、キリ番有り難うございました!!!