The man who sprouts
「うわ〜、何あれ」
「あぁ、らんるちゃん。お帰りなさい」
「うん、ただいま。・・・で、あれは?」
買出しから帰って来たらんるは一歩店に入るなり、荷物を置く事もせずに
サカサカと座敷付近に佇んでいた凌駕の元に近付いた。
そんならんるに凌駕は笑顔を向けると、再びらんるが示した方、カウンターへと
視線を向けた。
「う〜ん・・・何時もより皺が1.5倍深いね、あれ」
「そして本数は二倍ね」
そんな二人の視線の先には、明らかに他の所よりも重く、そして黒い空気を纏った
彼らの仲間・三条幸人が鎮座していた。
「出てく時はご機嫌だったんだけどね、アスカさんと一緒だったから」
「そうよね。見るからにご機嫌だったわよね。・・・じゃあなんで今あんな風になってるの?」
もしかして・・・と、らんるは隣の凌駕へと視線をやった。
その視線に気付いたのか、凌駕はフルフルと首を横に振った。
「今日は邪魔してないよ、俺」
「じゃあ・・・原因はアスカさん?」
そう言って二人の視線は幸人と凌駕達の丁度中間地点でオロオロしているアスカへと向けられる。
「・・・それはないでしょ。」
「ないわね。あの眉間の皺加減はアスカさん以外の理由よね」
うんうんと頷く二人。
――ポーカーフェイスは上手いが、眉間の皺は正直な男・三条幸人。
そしてその皺加減で彼の感情を読む凌駕とらんる。
今の所その読みは百発百中、大当たりであったりする。
で、今回はと言うと・・・・
カチャ
バンッ!!!!
・・・何度目の客だろうか。
どうやらこの店と外では完璧に空気・・・と言うか世界が違うらしい。
幸人が帰ってきてからと言うもの、恐竜やは一気に開店休業状態にされてしまった。
凌駕は今回もすぐさま元の通りに閉ざされた扉に小さく息をつき、
未だオロオロとしているアスカに向かって手招きをした。
「何かあったんですか?」
―――まぁあんな殺気をあからさまに出しまくっている状態で今更何かあったのか、もないのだが。
とりあえず物事は順序良く。
それを基本にし、何度か幸人の背中へと視線を飛ばしながらやって来たアスカに問いかけると、
「はぁそれが・・・多分私のせいではないかと・・・」
と、酷くしょんぼりとした表情で答えられた。
その答えにすぐさま凌駕とらんるは反応した。
「「いや、それはないですから」」
幸人がアスカのせいで一喜一憂したとしても、機嫌が悪くなる事など未来永劫ある筈がない・・・
と言うのが彼らの定説だ。
なのですぐさま否定し、再び問いかける。
「で、何があったんです?」
「一緒に出かけましたよね?」
「え、えぇ。それで幸人さんと一緒に歩いてたんですが、私が途中からついていけなくてですね、
かなりお時間を取らせてしまったんです」
だから私のせいなんです・・・と悲しそうな顔で頭を垂れてしまうアスカに、凌駕とらんるは
首を傾げる。
――途中からついていけなくなったって・・・それって反対じゃ・・・
思わず幸人の足へと視線が向いてしまうのは、人の良識加減としていかがなものだろう。
だがそんな小さな事には拘らない凌駕は首を傾げながらアスカへと視線を戻した。
「なんでついていけなくなったんです?」
「それが歩いていると色んな方が話しかけてこられたんです。やはり話し掛けられたらお答えしなければ
いけませんよね?で、その度に足を止める事となりまして・・・」
・・・成る程。
凌駕とらんるはその光景をありありと思い浮かべる事が出来、力が抜けていくのを感じた。
多分・・・と言うか間違いなく、幸人の不機嫌な理由はそれである。
無断でアスカに声を掛けた・・・とか。
アスカの視界に割り込んだ・・・とか。
ようは必死に作り出したアスカとの幸福な時間を邪魔された・・・と言う事だろう。
・・・この場合、何度も立ち止まってみすみすキャッチな方々のお話に耳を貸した
アスカのせい・・・と思わない所が、幸人の性格をよく理解していると言うか・・・
とりあえず完璧正解だろう理由を予想した凌駕達は軽く息をついた。
――何処までも不幸な・・・
無意識に凌駕達の頭にそんな言葉が浮かび上がり、生暖かい視線を向けてしまう。
・・・それは彼の不幸の原因の大半を占めているだろう二人に言われたくない言葉第一位であろう。
「で、そのつど幸人さんが戻ってきてその場から連れ出した・・・と」
「はい。幸人さんが言われるには『付き合うだけ無駄』らしいんですけど、私にとっては
どれも知らない事ばかりだったのでつい・・・」
と、悲しそうな顔をするアスカに、凌駕達は一瞬悪いのはキャッチと幸人だ!・・・と
怒りを感じたが、なんとかそれを押さえ込み、まずはこの開店休業状態をどうにかしよう。と、
思考を巡らした。
折角、久しぶりに、奇跡的にも今日はやる気が出てるのだ。
――この気紛れ、そして作り置きしたカレーを無駄にしてなるものか!
罰は何時でも何処でも何度でも出来る!!
と言う事でこの状況を打破すべく、凌駕はアスカの耳にボソボソと、ある作戦を授けたのだった。
その頃、カウンターに座り込み、アスカ以外のもの全てに呪詛でも吐いているような形相の幸人は
先ほどまでの自分の状況に腹を立てていた。
全く・・・なんで俺達があんな目に合わなければいけないんだ!
普通に・・いや、普通以上に仲良く親密ではあったが、歩いていただけだぞ。
それをウジャウジャと邪魔な奴らが沸いて出てきやがって・・・
俺の周りは敵ばかりかっ!!?
大体あんな奴らが普通に道に居ていいのか!?
エステだの羽毛布団だの『銀の男』を目指そうだの・・・
アスカは既に『俺の男』なんだから目指す筈がないだろう!
・・・て、待て待て落ち着け。
その表現は日本語的には合ってる筈だが微妙に嫌な感じがするぞ?
どうなってるんだ、正しい日本語!!
――本当に全てのものに怒っているらしい。
そんな幸人の背後に、少々オドオドとしながらもアスカがゆっくりと近づいていった。
しかし幸人は呪詛を吐くのに忙しいらしく、その気配には少しも気付かずそのまま自分の世界に没頭する。
だが・・・まぁティッシュ等の試供品を配るのは百歩譲って許すか。
あれはアスカが喜ぶからな。
俺に言えばあんなもの幾らでも買ってやると言うのに・・・中々の倹約家だな。
その姿勢、大変好ましいぞアスカ。
まぁ配ってる奴らにあんな笑顔でお礼を言うのは気に入らんがな。
だが、その後嬉しそうに俺に報告しにくるしな。
あんなに嬉しそうな顔を見られるならいっその事行く道全てに居て欲しいほどだぞ。
・・・ま、それはそれで邪魔だがな、心底。
――自分勝手にも程があるだろう。
幸人が矛盾しまくった事を考えていると、不意に自分のすぐ横に誰かの気配を感じ、視線をあげた。
其処には眉を下げ、申し訳なさそうな顔でこちらを見ているアスカが・・・
どうした。と幸人が尋ねる前に、アスカが勢い良く頭を下げ、「すいませんでした」と謝罪の言葉を口にした。
それに対し、幸人の目がすっと細められる。
「・・・なんでお前が謝るんだ」
「あの・・・私が度々立ち止まってしまったせいで幸人さんにご迷惑をおかけしたと思いまして・・・」
そう言って頭を上げたアスカは、じっと幸人を見つめ、再び
「すみませんでした」
と続けた。
そんなアスカに幸人の眉がピクリと上がる。
座っているせいもあるが、それ以外でも常にアスカの視線は幸人の上にある。
だがそれにも関わらず、何故か見下ろされている感じはせず、寧ろ上目遣いで
見られているような気にさせられる。
それも飼い犬(大型犬の幼少期・指定)のような目で・・・である。
幸人はついアスカの頭を撫でそうになってしまう自分の手に力を入れ、押しとどめる。
・・・とりあえず昼間の店内、彼的敵陣のど真ん中だと言う事は覚えていたらしい。
「別に迷惑だとは思わんが、世の中には色んな人間がいるんだ。幾ら自分の知らない、
興味のある話であったとしても程ほどにしておけ」
思いのほか入ってしまった力を抜くように幸人は息を一つつく。
そんな幸人に、アスカの顔に安堵の笑みが浮かんだ。
そしてその場にしゃがみ込むと、がしっと力の入ったままの幸人の手を両手で掴み、
「でしたら幸人さんが私にもっとこの世界の事を教えてくださいますか?」
――今度は期待を込めた、本物の上目遣いで幸人を見詰めたのだった。
手には暖かい、思いのほか柔らかいアスカの手。
目の前には笑顔+上目遣いな最強アスカ。
・・・これはあれか?
俺の理性を試しているのか?
それとも男気を試しているのか!?
それにもっと教えてくれなんて・・・それは含むのか?
含んでいいのか?あれやそれやあんな事を〜!!!!!!
思わず脳内ショートを起こし、固まってしまった幸人の前で
「あ、勿論お時間がある時に良かったら・・・で構いませんから・・・あの、幸人さん?」
そう言ってアスカはコトリと首を傾げた。
――まさに止めの一発である。
「・・・ね、あれ動かないね」
「あれはある意味必殺技ね、特定人物限定の」
「知りたい事は三条さんに教えて貰えば?ってアスカさんに言っただけなのにね」
「アスカさん、ナイスツボ攻撃だわ。もう完璧」
凌駕達は完全に固まって動かない幸人を見て、思わずアスカに拍手を送ってしまう。
だが次の瞬間、勢い良く幸人は立ち上がった。
「おい、今日はもう閉店だ!!」
「え〜、駄目ですよ〜。今日はカレーいっぱい作っちゃったんですから〜」
「じゃあさっさと客を呼べ、食わせろ、売りつくせ!!!
気合を入れて萌えていけっ!!!」
「「いや、それ意味判らない上に
本当に変換間違ってるし」」
――その日、恐竜やが営業以来最高の売り上げだったのは言うまでもない。
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斗崎さま・新カウンター100番ゲットリク・アスカに激しく萌えている幸人・・・
という事で、拙いものではありますが捧げさせて頂きますv
なんかあまり激しく萌えられなかったような・・・(滝汗)
相変わらず赤・黄、出張ってますしね(反省)
それでも少しでも楽しんで頂けたら嬉しい限りです★
では、リクエスト本当に有難うございました♪
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とゆーわけで!太門さんのサイトで新カウンタ100番踏んでGETして参りました!てかこんな少ない数字でキリリクするなってのな俺!
リク「アスカに激しく萌えている幸人」で書いて頂きまして!嬉しいっすー!!上目使いハァハァ・・・。
あやうく銀男になりかねない所はさすがです(笑)
太門さんありがとうございましたー!!!
2004/12/1