どうしてそうなったのか、俺には判らない。
ただ、蓮に呼ばれたから。蓮が来いって言ったから。
だからそこに行ったのに、どうして・・・・・・。
―――どうして?
Serenade ― 小夜曲 ―
その日、真司は蓮と手塚の三人で喫茶店・花鶏の店番をしていた。
沙奈子が、「今日はキャベツとナスの激安売りよー!!」と、
優衣ちゃんを荷物もち要員として駆り出して行ってしまい、
必然的にこの三人が残されたのだ。
ちょうど暇な時間だったので、真司たちはそれぞれに昼下がりのゆったりした時間を過ごしていた。
蓮はさっきまで居た客のコーヒーカップを洗っている。
手塚は何やらコインで占いをしながら考え込んでいる。
真司はやることもなく少し離れたテーブルに突っ伏してそんな二人を見ていた。
「手塚ー、なに占ってんの?」
「・・・おまえのことだ」
「え、俺のこと?何々、何てでたの?」
「まだ大雑把なことしか分からないが・・・今日お前に悪いことと良いことがあるらしい」
「え、悪いことがあんの?まあ良いことの後に悪いことがあるよりましか」
そう言いながら真司は手塚の向かいの椅子に座った。
「相変わらず前向きだな、お前の考えは」
手塚が、少しだけ笑顔を浮かべながらそう言った。
「ただ単純バカなだけだろ」
と、蓮がカップを乾燥棚に置きながらいつもの淡々とした口調で喋った。
「・・・あいっっっかわらずムカツク奴だなお前」
「俺はお前の性格を適切に述べただけだが?」
「何で俺が単純バカなんだよ!」
「ああ、言葉が多かったな。お前にはバカで十分だ」
「んがああぁぁぁ――――!!!何でお前はいつもいつもいつもおぉぉぉぉぉ!!!!」
「何だ、不服か?」
「大いに不服だバカヤロ―――――!!!」
「・・・何か熟練の漫才コンビみたいだな」
と、手塚の冷静なツッコミが入ったが、その声は虚しく部屋に四散した。四散するしかなかった。
その時。
RRRRRRRRRR・・・・・・・・・・・・
蓮の携帯が喧しく鳴り、持ち主は慣れた手つきで携帯を開けた。
「公衆電話・・・・・・?」
小さくそう言いつつ、足早に外に出て行く。
何か訝しげな顔をしていたが、しばらくして携帯を切ると、外に止めてあったバイクに乗ってどこかに行ってしまった。
真司はそんな光景を花鶏の中から見ていたが、蓮が出かけると再び手塚の占いを見ていた。
蓮が花鶏から出ていって数十分後。
「・・・何だ・・・・・・?」
「ん?手塚、どうしたんだ?」
真司はそばにあったグラスの水を拝借しながら手塚の顔を見ると、神妙な顔をしていた。
「占いで何か出たとか?」
「ああ。もっともお前のことではなく、秋山の事だがな」
「蓮の?」
「・・・いまからあいつにも悪いことが起こる。その上、お前との運勢がほぼ一致している」
「なんだよそれ。どういう意味なんだ?」
手塚は素早くコインの位置を戻し、一枚のコインを手に取ると親指で弾いた。
弾かれたコインが吸い込まれるように置かれてある一枚のコインの上に重なる。
「今日一日、お前と秋山は同じ・・・とまではいかないが、
近い運命を歩むことになる、と言ったところだろう。」
「・・・何かいまいちよくわかんねーな。んで、その悪いことって?何か分かった?」
「いや、それはこれからだ。くわしく知ろうとすればそれだけ時間もかかるしな」
「ふーん・・・そっか」
頷きながら水を汲みにキッチンに行くと、真司の携帯がメロディを鳴らし始めた。
愛用の赤い携帯のディスプレイを見ると、そこには秋山蓮の名が表示されている。
真司は持っていたコップをキッチンの流し台に置くと携帯のボタンを押した。
「蓮?どうしたんだよ、急に出ていって」
「城戸、いま中か?」
「え?ああ、そうだけど」
「ちょっと外に出てくれないか」
「なんで」
「いいから。今すぐ外に出てくれ」
真司は妙な感覚を覚えながらも、蓮の言うとおりに花鶏から出た。
「外出たぞ、蓮。でもなんで・・・」
喋ろうとすると、間髪いれずに蓮が言葉を返した。
「城戸、俺は今から浅倉を倒す。」
唐突にそう言った蓮に、真司は驚いた。あまりにも急な蓮の発言に。
「だが、俺一人では無駄死にが良い所だ。だから一緒に戦ってくれ」
「ちょ・・・ちょっと待てよ蓮!何で急にそんな・・・」
「別に理由はない。倒そうと思ったときに倒す。何かおかしいか?」
「べ、別におかしかないけど・・・。じゃあ、手塚も連れて行ったほうが」
「いや、お前一人で来てくれ。奴にもこのことは言うな」
「は?どういうことだよ。わけわかんねーんだけど・・・」
「いいか。今から二十分後に浅倉がいる廃屋に来てくれ。一人でだぞ」
そう言うと、蓮はすぐに携帯を切ってしまった。
「あ・・・ちょっと、蓮!」
真司は自分の携帯に向かって蓮の名を呼んだが、もう声はなかった。
「まったく、何考えてんだよ・・・」
そうぶつぶつ言いながら、真司は花鶏のドアを三十センチほどあけ、
手塚に少し留守にすることだけを伝えると自分のズーマに乗って出かけた。
蓮のために。
真司が花鶏から出て行って十分少々たった頃、手塚は言いようのない不安感に苛まれた。
「何だ・・・?この感じ、あの二人に何があるというんだ・・・・・・」
手塚はコインに細い紐がついたようなものを取り出し、指で紐をつまんでコインをぶら下げた。
いわゆるダウジングに使う道具だが、手塚の場合は集中するためのきっかけのような物だ。
深呼吸をし、精神統一をする。
あの二人の、できるだけ正確な未来を読み取るために。
約束の時間より二分ほど早く浅倉のいる廃屋に着いた真司は、
蓮の黒いバイクの傍にズーマを停め、蓮を探した。
不気味なほど静まり返ったその場所。上空では二、三羽の烏が鳴いていたりする。
「蓮。おーい、蓮。何処にいるんだよ」
名を呼ぶが、返事がない。
「まったく・・・。来いって言ったのはお前じゃねーかよ」
姿の見えない蓮に毒づきながら、廃屋を覗いた。
「・・・まさか、もう乗り込んだわけじゃねーよな」
蓮の性格からして、可能性が・・・無くは無いと考えた真司は最悪の事態を想像し、
意を決して廃屋の中へと乗り込んでいった。
「蓮、いないのかよ、蓮」
少し湿った空気のするその場所で辺りを見渡す。
すると。
そこには。
コンクリートの柱に縄で縛り付けられた蓮がいた。
「れ・・・蓮!どうしたんだよ!一体、何があったんだ!」
顔を見ると青痣があり、口の端は切れて血が滲んでいた。
こめかみの辺りからも血が流れ、頬を伝って下に落ちている。
蓮の黒いTシャツにも血が滲んでいた。
「・・・城戸」
申し訳なさそうな蓮の顔を見て、真司は怒りに苛まれた。
「浅倉はどこいったんだ?見つけてぶっとばしてやる!」
その時。
「俺をぶっとばす?おもしろい事言ってくれるじゃねぇか」
真司の真後ろに、気配も無く浅倉が立っていた。
驚き、振り向こうとする真司の首を、素早く腕を回して押さえつける。
「んな・・・っ、何すんだ浅倉!」
「何をするだと?そんなの分かりきったことじゃねぇか。俺が今からお前を喰うんだよ」
「喰うって・・・。どういう事だよ!」
「これだからおつむの軽いお子様はいけねぇなあ」
「だれがおつむの軽いお子様だっつーの!」
そう真司が言うと、浅倉はにやりと笑い、耳に唇をあてていつもよりも更に低い声で喋る。
「俺がお前を犯すってことだ。分かったか?」
背中の下のほうにぞくりとした感覚が走るのを覚え、
真司は浅倉の手を払いのけようとする。
しかし、体力も体格も浅倉に劣るため、
あっさりと近くの大型のソファーに押し倒されてしまった。
「な・・・なんで俺がお前に犯されなきゃいけないんだ!離せ!!」
必死で抵抗しながら、真司は浅倉に向かって叫んだ。
「ついでに言うとなぁ、城戸。俺が秋山を呼んでお前を呼ばせたんだ。
殴ったあとでそこに縛り付けてな。」
「な、何でそんな事・・・・・・」
「決まってるじゃねーか。お前とシタいからだよ」
そう言うと浅倉は真司の耳を甘噛みした。
ぞくぞくとした感覚が体を走り、真司は顔を背けた。
その時、真司にある考えが浮かんだ。
「・・・・・・分かった、浅倉。好きにしろ。その代わり、蓮を開放してくれ」
ちらりと蓮のほうを見た浅倉は不敵な笑みを浮かべ、そして言った。
「いいぜ・・・・・・。交渉成立だ。ただし、そうするのはお前を抱いてからだ」
同時刻。花鶏にて。
「これは・・・まさか・・・・・・!!」
自分の占いの結果に驚きを隠しきれない手塚が立ち上がろうとしたとき、
タイミング良く、買い物を終え大荷物を抱えた優衣と沙奈子が帰ってきた。
「いやー、ちょっと買いすぎたかしらねぇ。って、
あら、手塚君一人なの?あの二人はどこ行ったのかしらまったく」
そう言いながら、沙奈子は荷物をカウンターに置いた。
優衣が不安そうな顔をしながら手塚のそばに行く。
「・・・なにかあったの?」
手塚は優衣のほうを向くと、少しだけ焦りを浮かべながら言った。
「どうやら秋山と城戸は浅倉の所に行ったらしい。
俺も今からそこに行く。車を貸してもらえないか?」
「待って、私も一緒に・・・」
優衣が行こうとすると、手塚は腕を掴んでそれを制した。
「止めたほうがいい。君が行っても浅倉のモンスターに喰われるのがおちだろう」
そう言われ、優衣は躊躇いながらもズボンのポケットから車の鍵を取り出し、手塚に渡した。
「絶対に、二人を止めてね・・・」
手塚は小さく頷き、走って花鶏の車庫に向かった。
優衣は、そんな手塚の背中を見ることしかできなかった。
浅倉のいる廃屋。
その中にあるソファーの上で浅倉に犯されようとしている真司。
蓮はその光景を、ただ見ているしかなかった。
何とかこの束縛から逃れようと縄に爪を立てるが、なかなか思うようにいかない。
城戸をこんな目に合わせてしまったのは自分のせいだ・・・
だから、何とかこの縄を切って、城戸を助けなければ・・・
そう蓮は思い、さらに強く爪を立てた。
ぷつりと縄を構成する糸が一本切れる感覚。
爪の端から血が滲む。だが、そんなことにかまっている暇は無い。
蓮は必死だった。
自分の大切なモノを護ろうと、
必死だった。
真司はただ、この状況に耐えることだけを考えていた。
自分が好きな男の前で好きでもない男に抱かれることほど辛い事はない。
手塚の言っていた俺と蓮に起こる悪いことって、この事なんだろうなぁ・・・
と、頭のどこかで考えていた真司は、浅倉の突然の行動で現実に戻された。
浅倉が首筋に噛み付いてきたのだ。
「や・・・っ、痛っ!」
「お前、今ほかのこと考えてただろ。いけねえなぁ、そんなやつにはお仕置きが必要だ」
「お仕置きって・・・、何だよ。何する気だ」
浅倉は薄く笑いながら呟いた。
「こうするんだよ」
そう言うと浅倉は真司の髪を掴み、自分自身を取り出すと無理やり真司の口に含ませた。
「んん・・・っ!!う・・・っ!」
「ほら、ちゃんと舐めな。歯ぁ立てたら即秋山を殺すからな」
そう言われ、仕方なく真司は浅倉に奉仕し始めた。
「う・・・んっ、んぅ・・・」
口から漏れた唾液が浅倉のモノを伝って流れる。
真司はそれを舐めとるように舌を動かした。
「けっこう上手いじゃねーか。いつも秋山とシてるのか?」
真司の頭を抑え、さらに深く含ませる。
「出すからな。全部飲めよ」
瞬間、口の中に精液の味がした。
「ぐ・・・っ!あう・・・つっ!!」
思わず口を離してしまい真司の口から飲みきれなかった精液がこぼれる。
それを見て、浅倉は不敵な笑みを浮かべた。
「いいぜ・・・いい顔だ・・・・・・。そそられる」
浅倉は自分の精液がこぼれる真司の口に口付けた。
歯列をなぞり、舌を絡め取る。
そして、それを強く吸った。
「んうう・・・つっ!ん・・・・・・んう」
胃がぞくりとし、一瞬、真司は浅倉からもたらされる快感に流されそうになった。
真司の口から自分の口を離しズボンと下着を手早く脱がせると、
浅倉は真司のモノを口に含んだ。
「ぁあ・・・っ!やあっ・・・やだ、やめ・・・っ」
「やめろ?ここまでしといてそりゃねぇだろ」
そう言い口を離すと、浅倉は自分の指を舐めて濡らし真司の秘部に中指を挿し入れた。
「痛・・・っ!!やだっ・・・いた・・・ぃ!」
必死に痛みに抵抗するが、浅倉は容赦なく二本、三本と指を入れてくる。
「やああっ!あ・・・っ、ああ・・・つっ」
やがて指を引き抜くと、浅倉は自分のモノを真司の秘部に押し当て一気に貫いた。
「ああああつっ!!やあ・・・あ・・・いた・・・い、やめ・・・ろぉ・・・!」
しかし、そんな声など聞く耳持たないといった様子の浅倉は、更に深く自らを差し込んでくる。
「いやあぁぁ・・・あ・・・・・・あぁ・・・」
「いいな、お前。・・・もっと声を聞かせろ」
浅倉はそう言うと、激しく腰を動かした。
「あ、あああああっ!やあっ、ゃ・・・ああ・・・・・・あっ!ああっ!」
声に快感の色が見え、浅倉は真司の耳元で囁く。
「ん?もうイキそうなのか?」
「あ、んうぅ・・・あっ!」
その声すらも快感に感じ、さらに声をあげる。
「だったら・・・好きなだけイキな!」
瞬間、浅倉は真司の最奥に自分のモノをねじ込んだ。
「イや・・・あ、ああああああっ!!!」
その快感に耐え切れず、真司は精液を迸らせた。
浅倉も中に精液を流し込む。
真司に挿し込んでいた楔を引き抜くと、精液と血が交じり合って秘部から流れ出た。
体を好き放題された真司は放心状態でソファーに倒れている。
浅倉は、そんな真司を横目で見ながら乱れていた自分の衣服を直し、
相変わらずの不敵な笑みを浮かべていた。
刹那。
ヒュンという風を切る音がして、浅倉の左のこめかみ辺りに何かが振り下ろされた。
ゴッ・・・という鈍い音がした。が、その音は狙った頭に当たった音ではなく、
浅倉が自分の左腕で止めた音であった。
止められたのは近くに転がっていた鉄パイプで、それを振り下ろしたのは、
さっきまで縄で縛られていた蓮だった。
「貴様・・・どうやってほどいた・・・?」
怪訝な顔をする浅倉。しかし、それは蓮の手を見て明らかになった。
蓮の両手首には赤黒い痣ができている。
そして、
その両手の爪は少し削れ、肉との間から血が滲み出していた。
「爪で切った。案外やればできるものだな」
だが、頼みの綱の攻撃が防がれてしまい、状況が悪いことに変わりは無かった。
「残念だったなあ、千載一遇の機会を逃しちまって。ははははは!!!」
浅倉が笑う。
しかし蓮は相変わらずの淡々とした口調で言った。
「いや・・・案外そうでもないかも知れないぞ」
「何・・・?」
浅倉が不信そうな顔を浮かべたその時。
首元にナイフの先が当てられた。
そのナイフを浅倉の後ろから当てているのは
手塚であった。
「浅倉、城戸と秋山を解放しろ」
手塚はそう言い、首もとのナイフに少しだけ力を入れた。
そのナイフはとても鋭利な物のようで、首の肉が少し切れ血が首筋を伝う。
浅倉が容易に動けない状態なのを確認すると、
蓮は近くにあった布を真司の体にかぶせ、投げ捨てられた服を拾った。
そして真司を横に抱き、すこし浅倉から離れた。
「・・・いいぜ。今日俺は気分が良い。これで許してやるよ」
それを聞いた蓮は、ゆっくりと後ずさりながら廃屋の外に出た。
手塚も手に持つナイフを浅倉の方に向けながら、その後を追う。
浅倉はそんな三人をじっと睨むような目で見て、
喉の奥のほうで笑っていた。
ズーマをワゴンの後ろに乗せ、気絶している真司を運転席の後ろに寝かせると、
蓮は自分のバイクに跨った。
本当は真司の傍にいてやりたいが、バイクがあるので諦めざるを得なかった。
やがて手塚が戻ってくると蓮は何も言わずにバイクを出した。
手塚も、その後を追うように車に乗り込みその場を後にした。
浅倉のいた廃屋を離れて数分の場所の国道を走るバイクと車。
悔しさが滲み出ているな・・・と、車の運転席から蓮の背中を見て手塚は思った。
廃屋で何があったかは占いで大体分かったし、
そうでなくともあの状況を見ればおおよその見当は付く。
手塚は、この先の展開を知っている。
しかし、それを蓮や真司に言おうとは思わない。
なぜなら、回避などしなくてもいいことだし、
最初の占いに出た〈良い事〉だからだ。
二人にとって。
花鶏に着くと、空は青から橙へと変わる頃だった。
手塚は優衣と沙奈子に外で食事をするよう勧めた。
優衣もその言葉に裏の意味があることを察し、
久々に外食にしようと言い出して沙奈子を誘った。
こっちの夕食は適当に何か作るから、と蓮がいうと、沙奈子はその言葉に乗った。
暫くして、用意を済ませた二人が花鶏から出かけていったことを確認すると、
蓮は一旦車に戻り寝かせていた真司を抱き起こして二階にある自分たちの部屋へ運んだ。
真司のベッドに体を横たえさせると、蓮はその枕もとに腰をかける。
やがて、ホットコーヒーを二つ持って手塚が部屋に入ってきた。
コーヒーのひとつを蓮に渡しながら呟く。
「あの二人に、こんな姿の城戸を見せるわけにはいかないからな」
「ああ・・・」
コーヒーを受け取ると、蓮はため息混じりに頷いた。
「体、拭いてやれ」
そう言うと手塚は一枚のバスタオルを蓮に差し出した。
「・・・すまない、お前には迷惑をかけた」
バスタオルを受け取りながら、蓮は手塚に言った。
手塚は苦笑いを浮かべて、背を向け部屋のドアに向かった。
「その言葉は、城戸に言ってやれ」
ドアを閉める前にそう言い残し、手塚は部屋を出て行った。
蓮はそう言われ真司のほうに目を向ける。
コーヒーに少し口を付けると香ばしい香りが口の中に広がり、心を落ち着かせた。
そのコーヒーを近くの小さなテーブルに置き、
受け取ったバスタオルで真司の体を拭いてやる。
顔、首、胸・・・と浅倉に汚された所を拭っていく。
その時、閉じられていた瞼が薄く開き、真司が目を覚ました。
「あれ・・・蓮?何で・・・」
「・・・気が付いたか」
安堵の顔を浮かべながら、蓮が呟いた。
「そうだ、俺、浅倉に・・・」
真司がそう言い体を起こすと、蓮はその真司の頬に手を添えた。
「いい。もう何も言うな」
そう言われた真司は、蓮の指を見て驚いた。
「蓮!この指・・・どうして!?」
「ああ、これか。脱出する時にちょっとな」
「ちょっとって・・・そんな・・・・・・はやく治療しなきゃダメじゃんか!」
そう言われた瞬間、蓮の心の奥で何かが弾けた気がした。
目の前の存在を強く抱きしめる。
真司は驚いたが、蓮が真剣なんだと分かると自分も腕を蓮の首に回した。
「蓮・・・?」
蓮の腕の力が少し強くなる。
「どうしてお前は、自分のことを放り出してまで他人のことを気遣うんだ・・・・・・!!」
その蓮の声は・・・少し震えていた。
「蓮・・・」
真司は腕を外し、蓮の目を見つめる。
「それは、お前も同じだろ?血が出るくらい爪使って」
言いながら、蓮の指をいたわるように自分の手で優しく包む。
もう泣きたくなった。
蓮は再び真司の体を強く抱きしめる。
「蓮・・・・・・、頼みが・・・あるんだけどさ」
「・・・なんだ?」
真司は少し間を開けて、その頼みを蓮に伝えた。
「俺と、・・・シて・・・・・・くれないかな」
その発言に驚いた。だが、真司は更にこう言った。
「だって、浅倉に抱かれた感触が・・・まだ残ってて、・・・・・・・・・消えないんだ」
それを言われ、蓮は真司を座っていたベッドに押し倒した。
汚されてしまった真司を救うために。
今目の前の存在を救えるのは、自分だけなのだ。
部屋に舌と舌を絡めあう音が響く。
口の端からどちらの物とも知れない唾液が零れ落ちる。
真司は、蓮を離すまいと必死に蓮に抱きついた。
「う・・・んっ、んん・・・っ」
しばらくして蓮が口を離すと、真司は儚く笑って言った。
「・・・・・・ごめんな、蓮。こんなこと」
「いいから」
そう言い、真司の唇に小さくキスをした。
浅倉に甘噛みされた耳や首筋にもキスを落としていく。
唇をつけられた所から熱が広がっていくようだと思った。
徐々に蓮の唇が下に下りていき、真司の胸の突起を舌で転がす。
「ん・・・っ、んう・・・」
声が色を増していく。それを見た蓮は真司自身に触れた。
「ぁ・・・や、蓮・・・っ」
「大丈夫だ、任せろ」
そう言い、蓮は真司の股の間に顔を埋めると、真司のモノを口に含んだ。
「ぁあ・・・つ!蓮・・・蓮・・・っ」
蓮の口内で真司のモノが硬くなり、熱を増す。
蓮はそれから名残惜しそうに口を離すと、
手にローションを塗り、秘部に中指を入れた。
「あっ!あ・・・うんっ、んん・・・」
反応を見ながらゆっくりと抜き差しを繰り返し、慣れてくると入れる指の数を増やした。
「あ・・・蓮・・・、もぉ、大丈夫だから・・・・・・はやく・・・っ!」
その真司の声に答えるように指を引き抜くと、
蓮はズボンのチャックを下ろして自身を真司の秘部にあてがった。
そして、呼吸を合わせながら中に自分を埋めていく。
「くっ・・・あああぁ・・・っ!あっ!蓮・・・・・・れ・・・んっ!」
息遣いが激しくなり、真司は縋るように蓮の名を呼んだ。
蓮はゆっくりと自身を出し入れし始めた。
秘部に塗られたローションがグチュリと水音をたてる。
その音が真司にも聞こえ、脳の中が犯されているような感じがした。
「あ、や・・・蓮っ、もっと、俺の中に・・・っ!」
蓮は望みどおり、更に深く真司を貫いてやる。
「あっ!ああっ!蓮、蓮!!」
追い上げられ、限界が近づく。
「れ・・・ん、蓮じゃなきゃ・・・やだ、おれ・・・・・・蓮・・・が、いい・・・っ」
耳元でそう喘がれ、蓮は真司自身を手で弄る。
「やあっ!んぁ・・・あっ!あああっ!も・・・っ、もお・・・ダメ・・・・・・っ!!」
「・・・っ、城戸・・・・・・っ!」
二人は快感の波に流されながら高みまで上り詰め、そして同時に果てた。
深夜、真司と蓮の部屋。
不意に目を覚ました真司は、その腰の痛みで我に返った。
間接が少しばかり痛い。体がきつい。
「・・・そうだ、俺、蓮にシてって言ったんだっけ・・・」
真司は自分のすぐ横で眠っている蓮の顔を見た。
「蓮・・・ありがとな。俺、お前のこと・・・ちょっとだけ好きになったかも」
そう言い、蓮の顔を撫でる。
「そういう事はもっとちゃんと言ってほしいものだな」
と、寝ていると思っていた蓮が喋ったので真司は驚いた。
驚くついでに壁で後頭部を強打してしまったりもした。
「い・・・ってー!って、おい蓮!お前いつから起きてたんだよ!!」
「お前が起きたときに目が覚めた」
「な・・・!」
蓮は体を起こし、真司の顔を見てクスリと笑った。
「寝ているふりをして正解だったな。お前の本音が聞けた」
「あ・・・あれは別に・・・・・・」
そう言うと、顔を赤らめて壁のほうを向いた。
蓮はそんな真司を抱きしめて頬にキスをすると、再び布団に包まった。
「蓮・・・・・・」
「早く寝ろ」
真司は横を向く蓮の頬に同じようにキスをして、耳元で小さく囁いた。
「・・・好きだ、蓮。ちょっとじゃなくて、すごくな」
そう言うと蓮の横で先程よりも深い深い眠りについた。
時はちょうど午前二時を回った頃。
次に真司と蓮が起きたのは午前十時頃だった。
ほぼ同時に起きた二人は着替えを済ませて台所へ向かう。
そこには手塚がいて、テーブルの上にあるコーヒーを飲んでいた。
目の前には二人分の朝食が置かれてある。
真司は手塚の向かい側の椅子に座ると、手塚に話しかけた。
「どうしたの、これ。まさか手塚が作ったとか?」
「いや、優衣ちゃんが作って置いていった」
「優衣ちゃんとおばさんは?」
「買い物に出かけた。今日は卵とハムが激安なんだとか言っていたな」
「ふーん、そっか」
話を聞くと、真司は目の前の食事に手を合わせた。
「一食抜いてるから腹減ってたんだー!」
そう言ってトーストにかぶりつくと、蓮がキッチンからミルクとグラスを持ってきた。
「お、サンキュ蓮」
と、グラスを取ろうとしたが、蓮は真司にそれを渡さずに自分の席に座った。
そして相変わらずの口調で言ってくる。
「誰もお前にやるとは言ってない。欲しければ自分で取りにいけ」
「・・・ほおんんんっっっっっとにムッカツク奴だなお前!」
そう言いながら、真司は自分の分のグラスをキッチンで見つけ自分の席に座りミルクを注ぐ。
手塚はそんな真司を見ると小声で話しかけた。
「・・・俺の占いが当たったようだな」
真司はそう言われると少し考え、そしてお得意の笑顔で答えた。
「・・・・・・そうだな」
空にはツバメが飛び交う、ある夏の日の話。
END
スクロールバー見た瞬間に「うわ!」って思った人手ぇ上げー(はーい)(←お前が言うな)
疲れた・・・としかいえませんなぁ・・・。
ノーパソが家に来たのが20日で書き終えたのが22日・・・。
どーゆー事?(笑)気合入れすぎや俺。
文面の蓮の言葉を借りるわけじゃないけど、やれば出来るもんだ人間って。
ここでちょっと説明を。まず手塚は花鳥に居候してます。
真司と蓮はもうすでに出来てますが、まだ経験は浅い、位で考えてます。
え?なぜ浅倉は蓮の携帯番号を知っていたかって?
その辺は海の中にでも沈めといてください。
(笑/作者にもわからんらしい←あかんがな!!)
長いし訳わからんし矛盾も多いんですがどうしましょう(泣)
実はコレ、斗崎が初めて書いた小説だったり。
なんで、いろいろまあ、許してやってください m(_ _;)m
完成日 2002,9,22 斗崎雷駿拝
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