「一甲、これ特売品だったんだけど買いすぎちゃったからひとつあげるわ」
そう言われて七海に押し付けられたのは、小さい割には妙に重たい紙袋。
中身を確認しようと取り出してみると、瓶に入った琥珀色。
「・・・蜂蜜、か?」
「そ。なんかみょーに欲しくなっちゃったのよ」
考えてみたら蜂蜜ってそんな一気に減るほど使わないのにね。
そう言って七海は鷹介や吼太にも戦利品を分けているようだった。
(確か・・・一鍬は甘いものが好きだったな)
傾けると瓶の中でとろんと流れる液体を見つめながら、
一甲は一鍬が甘党だったことを思い出した。
前におぼろ研究所で出されたクッキーを一鍬は幸せそうにほおばっていた。
(・・・一鍬にいい土産ができたな)
一甲は瓶を袋の中に戻し、家路につくことにした。
「遅かったな兄者。何かあったのか?」
部屋に入ると、一鍬が夕食を作って待っていた。
以前までは料理は一甲が作っていたのだが、
最近では一鍬も(手つきは危なっかしいが)作れるようになってきていた。
因みに今日のメニューは定番(?)の肉じゃが。
「七海に呼び止められてな。土産をもらった」
「土産?」
首を傾げる一鍬の目の前に、紙袋の中から蜂蜜を取り出し、
一鍬に手渡した。
「あ、蜂蜜」
そう言い、うれしそうに琥珀色を見つめる一鍬の目が、
光を反射してきらきら光る蜂蜜と同じくらい光っていたのは、
恐らく目の錯覚ではないだろう。
「ほら、先に夕飯だ。早くしないと冷めてしまうぞ」
「あ・・・うん」
一甲の声に頷いた一鍬は、とりあえずそれを棚の上に置いておき、食事をとることにした。
夕食が終わり、一鍬の後に風呂に入り終えた一甲が戻ると、
一鍬が蜂蜜の瓶の蓋と格闘していた。
どうやら相当硬く閉まっているらしく、手が赤くなっている。
「一介の忍とも在ろうものが瓶の蓋くらい開けられなくてどうする」
「だって・・・兄者・・・」
むー、と睨む一鍬の手から瓶を取り上げ、ストーブにかけていた薬缶を手にすると、
置いてあった椀の中に湯を注ぐ。
蒸気の上がるその中に蓋のほうを暫くつけ、タオルで軽く拭いて回す。
すると意外なほど簡単に、ぱか、と開いた。
おおー、とでも言いそうな一鍬の額をぺし、と軽く叩く。
一甲が一鍬の傍に置いてあった大ぶりのスプーンを手にとり、中の蜂蜜をすくう。
つーっと流れる琥珀の液体を見つめて「綺麗だ・・・」と呟く一鍬の瞳が、
何だか情事のときのそれに似ていて、一甲はその瞳に見惚れた。
「・・・・・・兄者?」
首を傾げて見つめてくる一鍬の唇に、先程のスプーンを持っていってやると、
垂れそうになった蜂蜜を舌でちろちろと舐め取る。
その姿が酷く卑猥で、思わず空いていたもう片方の手を一鍬の項に這わせる。
「ん・・・兄者・・・」
はふ、と息をつく一鍬の頬に手を添えて上を向かせると唇を軽く啄ばむ。
舌を差し入れ口内を弄ると、甘い甘い蜜の味。
一甲にはそれが蜂蜜の甘さだけではないように思えた。
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いつかやってやろうと思っていた「食べ物ネタ」です・・・。
いやもう兄弟で何使うかと考えたら、蜂蜜以外に無いだろうと。
昆虫兄弟ですし(理由になってない/笑)甘いもの好きかなー、なんて。
特に一鍬はもう全プレビデオで確定済みですから。
完成日 2003、2、6 斗崎雷駿
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